nginxのカスタムrpmをmockでビルドできることを確認してからcoprでビルド・配布する環境を作りました
はじめに
Travis CIとcopr.fedoraproject.orgを使ってrpmをビルド・配布するのを試してみた · hnakamur’s blog at githubとmockコマンドでrpmをビルドする · hnakamur’s blog at githubの環境でいくつかrpmをビルド・配布してみたのですが、手元の環境でビルドを成功させるまでに試行錯誤するのと、coprにsrpmをアップロードしてビルド・配布するのが別の環境だと面倒なことに気付きました。
そこで、1つのdockerコンテナで両方を行えるようにしました。
Travis CIは外しました
また、Travis CIは使わないようにしました。理由は2つあります。1つめの理由はgithubのプロジェクトごとにTravis CIのプロジェクトを作ってcopr APIのログイン名、ユーザ名、トークンを環境変数で設定するのが面倒だったからです。これ自体はTravisのAPIを使えば解決する問題かもしれません。
2つめの理由は、結局手元の環境でビルドを試すので、そこからそのままcoprにsrpmを上げるほうが手っ取り早いことに気づいたからです。これは初回にrpmのspecファイルを作成するときも、その後specファイルのバージョンを更新して新しいバージョンのrpmを作成するときもそうです。
nginxのカスタムrpmをビルド・配布するためのdockerコンテナ
githubレポジトリhnakamur/nginx-rpmに公開しています。対応するcoprのプロジェクトはhnakamur/nginx Coprです。
ビルド前の準備
copr APIトークンを.envrcにコピー
coprを使うにはFedoraアカウントが必要です。Sign up for a Fedora account から登録してください。
Fedoraアカウントにログインした状態で API for Coprを開くと、ページの先頭にAPI Tokenというセクションがあり、以下のような内容が表示されます。
[copr-cli]
login = ログインID
username = ユーザ名
token = トークン
copr_url = https://copr.fedoraproject.org
# expiration date: 2016-05-12
以下のコマンドを実行して上記のgithubレポジトリを手元にコピーします。
git clone https://github.com/hnakamur/nginx-rpm
.envrc.example
を .envrc
にコピーして、上で表示したログインID、ユーザ名、トークンを .envrc
内の COPR_LOGIN
, COPR_USERNAME
, COPR_TOKEN
環境変数に設定します。
# NOTE: Copy this file to .envrc and edit the values
# Go https://copr.fedoraproject.org/api/ and login in and see the values to set.
export COPR_LOGIN=_your_login_here_
export COPR_USERNAME=_your_username_here_
export COPR_TOKEN=_your_token_here_
セキュリティを考慮してこれらの値はdockerのイメージには埋め込まず、実行時にdockerの -e
オプションで渡すようにしています。具体的には docker_wrapper.sh の docker run
の行を参照してください。
specファイルの調整
specファイルは SPECS/nginx にあります。各自のニーズに応じて適宜調整します。現時点では http://nginx.org/packages/centos/7/SRPMS/ で配布されているCentOS 7用のsrpmをベースに以下の3つのモジュールを組み込んだものになっています。
nginx.orgで配布されているsrpm内のnginx.specからの差分は https://github.com/hnakamur/nginx-rpm/compare/7e234d2a222778c0a46204dba4e2dcaae8bf7894...ce4e842731a9b90034f9e00796e16839d8bda826 で見られます。
SOURCES/*ファイルの調整
SOURCES/にsrpmで必要なソースファイルを置いています。必要に応じて調整してください。今は http://nginx.org/packages/centos/7/SRPMS/ で配布されているCentOS 7用のsrpmから頂いたものをそのまま使用しています。
なお、nginx自体のソースコード(例: nginx-1.9.9.tar.gz)や各エクステンションのソースコードは含めず、ビルド時にダウンロードするようにしています。これはgitレポジトリの肥大化を防ぐためです。
ビルドスクリプトの調整
ビルドスクリプトscripts/build.shも適宜調整します。
- copr_project_name、copr_project_description、copr_project_instructions、rpm_nameをお好みで編集してください。
download_source_files
関数はspecファイルの/^Source[0-9]*:
にマッチするパターンで値がhttpから始まるURLについてダウンロードするようにしています。そしてURLの最後のスラッシュ以降をファイル名として採用しています。このルールから外れる場合は、この関数を適宜変更してください。
Dockerfileとdockerのラッパースクリプトを調整
Dockerfileとdocker_wrapper.shを適宜調整してください。
通常はdocker_wrapper.shのdockerimageを好きな名前に変えるぐらいで大丈夫だと思います。
dockerイメージを作成
以下のコマンドを実行してdockerイメージをビルドします。
./docker_wrapper.sh build
dockerイメージを起動してmockでrpmをビルド
以下のコマンドを実行してdockerイメージを起動してbashプロンプトを表示します。
source .envrc
./docker_wrapper.sh bash
ちなみに私はdirenv/direnvを使っているので、 source .envrc
の行は自分で入力しなくてもdirenv/direnvが実行してくれるので便利です。direnvについては改めて、direnvを使いましょう! - HDE BLOGなどの記事を参照してください。
dockerイメージのbashプロンプトで以下のコマンドを実行してmockでrpmをビルドします。
./build.sh mock
mockはchroot環境を作ってそこでrpmをビルドするようになっているので、chroot環境の作成にちょっと時間がかかります。
dockerコンテナという独立空間が既にあるのにmockでchroot環境を作るのは無駄なんですが、coprがmockを使っているためmockでビルドが成功することを確認してからcoprにsrpmをアップロードするほうが、coprでのビルド失敗を減らせて良いですのでこうしています。
coprにsrpmをアップロードして、rpmをビルド・配布
mockでrpmのビルドが成功することを確認できたら、dockerコンテナ内で以下のコマンドを実行してsrpmをcoprにアップロードします。
./build.sh copr
scripts/build.shの copr_project_name
で指定した名前のプロジェクトがcopr上に存在しない場合はまず作成してからsrpmをアップロードするようになっています。
coprのプロジェクト https://copr.fedoraproject.org/coprs/${COPR_USER_NAME}/${copr_project_name}/
でビルドが完了すれば、rpmのレポジトリとして利用可能です。
まとめ
mockとcoprを使ってnginxのカスタムrpmをビルド・配布する環境について説明しました。
mockを使ってクリーンな環境でビルドできるので、今回のスクリプトでdockerコンテナを使う必要性は特にありません。Dockerfileでセットアップしたのと同等のCentOS7環境があれば scripts/build.shを使ってsrpmのビルド、rpmのビルド、srpmのcoprへのアップロードを行えます。
mockでのrpmのビルドが失敗した場合の調査方法とかcoprのAPIをcopr-cliではなくcurlで呼び出している話とか、いくつか書きたい話があるので日を改めて別記事として書こうと思います。